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タイトルは常に漢字二文字にこだわっただけの日記。  *広告目的のコメントはwho54211の判断により消去・ブロックさせていただきますのであしからず*


by who54211

読破

一カ月近くかけて、やっと読み終わった。
読破_f0129786_8533116.jpg「橋のない川」全7巻である。実はこの作品未完結のまま、作者である住井さんが亡くなっており、読み終えた7巻も「え?こっからどうなるの???」というところで終わっている。
作品は明治末期から昭和初期にかけての、部落差別問題をテーマにしており、奈良県にある小さな村の戦死者家庭の息子二人が前半は主人公で、後半はこの二男のほうが主人公になって物語が展開している。

恥ずかしい話だが、ワタシはこの作品を読むまで、「水平社宣言」も、関東大震災後の「朝鮮人大虐殺」も、「難波大助事件」も知らなかった。

この本は、日本に帰国した際、「オリンピック期間中に日本人でカナダに難民申請した人がいて、どうやら部落差別を受けていたって噂」からこの話題でかなり盛り上がったのだが、それで杏さんに勧められたのがこの「橋のない川」である。明治維新後、法律上は身分制度が解体され、エタ・ヒニンという身分はなくなった、とされているが、平成の今であっても、「部落問題」でググると「彼氏が部落出身で・・・」「自分は部落じゃないけど部落エリアで暮らしてて・・・」などという相談が寄せられたりしている日本の現状である。

部落、という言葉は、東京から西では差別用語のようだが、ワタシは栃木に長いこと暮らしていたのだが、よく患者さんが「あの人と自分は同じ部落でね・・・」と言ってた。つまり少なくとも栃木県では部落という単語は村とか字とかいう小さい単位のエリアをさしていたように思うのだ。でもワタシの出身地である愛知では「部落」=「元エタ・ヒニン」の意味合いが強く、これが関西エリアではさらに色濃いようである。

ワタシはこの本を読んで、ほんとに難民申請をした人がこの問題に該当している人たちだったら、正直難民申請した気持ちが分からないでもない。ただ、日本ではこの身分がない、と法律上はなっているため立証することが難しく、通らないとは思うが。

人間は、人間以下にもなれなければ、人間以上にもなれないのだ。
なのに生まれながらに「尊い」人と「卑しい」人がいるのが変な話なのだ。

ワタシは当たり前だが戦後の生まれで戦時中を始め、戦前、天皇陛下が「神」と奉られていた時代を知らない。
戦後、天皇陛下を中心とする皇族は日本国民の象徴となり、同じ人間であるということにはなったものの、明治から大正、昭和初期にかけて生きてきた人たちにとってはやはり神のように崇める、もしくは崇めなさいと命令されていた対象だったに違いない。

その矛盾と真っ向から戦っていく、というのがこのお話だったのだが、やはり途中で終わってしまっているのがすごく残念である。最終巻となってしまった7巻も、発行までに6巻から20年の月日が経過しており、作者である住井さん自身もその時点で90歳だったことを考えるとやはり完成させるのは無理だったのかもしれないが、それでも結末が知りたかったな~というのは一読者のわがままだろうか?

ただ、ほんとに勉強になるだけではなく、引き込まれるストーリー展開で、息もつかずにが~っと読んだ。また折を見て読み返したい作品である。

これは部落差別だけでなく、差別そのものがどのようにして始まるのかを知るためにも良い作品だと思う。世の中、相手のことを知らずに肩書や背景だけで判断してしまうことが多いが、その時点でそれは偏見の始まりといっても過言ではないだろうと思う。その人の中身を知るには、そういう偏見なしでお話をしないといけないんだろうけど、それもまた仕事上のお付き合いともなれば難しい話だし、大人になってからの友達づきあいであればなおさらなんだろうな~と思う。

カナダにも差別問題が全くないわけではないが、日本に比べるとステレオタイプに人間を分類する人が少ないように思う。「あ、ゲイなんだ。」と軽く流したり、人種や国籍、宗教に関係なく交流関係を発展させているのを見るとそれが良くわかる。

でもま~難しいよね、偏見持たずに対応するのって・・・。
と、自分の今までの行動に反省しつつ、今度は藤村の破戒を読もうかどうか悩んでいる。図書館にあるのは英訳バージョンのみなのだ(泣)。この島崎藤村の「破戒」は「橋のない川」の中でも登場しているが、おそらく藤村の時代ではこの結末でしか出版が許されていなかったんじゃないかな?と推測する内容のようだ。う~ん、やっぱり頑張って読もうかな・・・・、英語だけど。

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ブログん家
by who54211 | 2010-07-01 09:43 | 報告